所謂「考察」にはさほど関心はないが、「行間を読む」のは愉しくて仕方がないので、今週の『光る君へ』(第25回「決断」)は「The 行間」の回で、クラクラするほど愉しめた。例を挙げるなら、①道長が一条天皇に「辞表を叩きつける」場面。②蔵之介(役名忘れた)が、道長に「結婚の報告」をする場面。③まひろさんが、蔵之介から「左大臣(道長)に結婚の報告」をしたよ、と聞かされる場面。④百舌彦(本多力)が届けてきた〔道長からの結婚祝い〕に入っていた手紙が〔道長の直筆ではなかった〕ことが分かるところからの最後の場面まで。行間、行間、行間の嵐。特に、③のあとの「無言・無BGMの十数秒」は秀逸。いや、①の「許さない」道長もよかったなあ。
更に、野暮なことを色々書けば、最初の方で、まひろさんが越前で見上げた月が、モノすごーく遠くにあるのに、その直後に道長が京都で見上げている月は、(昔のまま)割と近くて大きい。これは、勿論、まひろさんにとっての道長との「心理的距離」と、道長にとってのまひろさんとの「心理的距離」以外の何物でもない。直後に、道長が自分の子供達と「イチャついている」場面を挿入する、視聴者フレンドリーな演出。
あと、蔵之介が、わざわざ道長に「結婚報告」をしたのは、まず道長に「まひろとは心の縁を切れ」というメッセージを送り、それを受けた道長が、ちゃんとまひろさんに「直筆ではない手紙」を送ることで「僕らの恋はもうオシマイですよ」を伝え、結果、まひろさんが蔵之介との結婚を決意するという流れを、二人よりも「大人」の蔵之介が作っているということ。「忘れえぬ人」を「とりあえず」忘れてもらわないことには、まひろさんはいつまで経っても蔵之介と結婚はしないからね。でも、これは蔵之介の悪意ではなく、或る種の「優しさ」だろうなあ。まあ、京極夏彦的に言えば、まひろさん(と道長)「憑き物を祓った」ということ。
そうそう。同僚たちにせっつかれて、「じゃあ、私がきつく意見しよう」と、左大臣(道長)に直談判にやってきた右大臣が、結局、腰砕けになってよくわからない挨拶をして帰ってしまう場面も好かった。このドラマは、僅か数文字の和歌に感嘆するような「察する能力の高い者たち」が主人公のお話なので(「人殺し」たちが主人公のいつもの「大河」とは違う)、きつい意見など何ひとつ口にせずモニョモニョ言って帰って行っただけの右大臣の行動の「真意」を、道長はちゃんと「察して(理解して)」(右大臣以下の者たちも我慢の限界にきてるんだなあ)、お上に「最後通牒」を突きつける決断をする。あの場面とかも、右大臣の情けないキャラを描いているようで、実は、道長の「能力」の高さ(安倍晴明の言うところの「よいもの」)を描いている。
そうそうそう。安倍晴明に「よいものを持っているのだからそれを使え」と言われた道長が、具体的にはっきり言ってもらわないと、何のことだか分からない、と答える場面は、「巨人」とクーパー捜査官のやり取りを連想した(『Twin Peaks』ファン限定)。まあ、「よいものをお持ち」で最初に頭に浮かぶのは、初対面のララァを評して言ったシャリア・ブルの言葉の方だけど(『ガンダム』ファン限定)。
いずれにしろ、明日の第26回が楽しみだなあ。