2023年11月26日日曜日

『THE BOYS』:メモ

ふつうの男たちが、調子に乗った性悪のスーパーヒーローたちを殺す話で、例えば、ダイヤモンドのように堅い皮ふを持つスーパーヒーローのケツの穴にプラスチック爆弾を突っこんでバラバラに吹き飛ばす――という説明をどこかで読んで、俄然興味が沸き、今更観始めた『THE BOYS』だが、パンクなノリが気に入った(流れる曲も好い)。オモシロい!

第1話を観てすぐに、「元FBIのキャラ(ブッチャー?)って、引退したセブンのメンバーのグリーンランタン...じゃなくてランプライター(?)でしょ?」と直観した。

で、とりあえず、「無事に」プラスチック爆弾も炸裂し、ハイジャックの件で、スーパーマン(ホームランダー?)のサイコパスぶりがハッキリしめされた所まで観て、グリーンランタンは、ワンダーウーマン(メーベル?)と寝たことがスーパーマンに「バレた」ので、「引退」したのだろうと「確信」した。

でもそうなると、フレンチの告白(最初の「スーパーヒーロー殺し」は11年前)と合わなくなる。じゃあ、グリーンランタンも、ブッチャーたちに始末されただけなのかな? 

【追記】ブッチャーとフレンチは、やってることと雰囲気は、もうどっからどう見ても「貧乏なバットマンとロビン」なので、それも気に入ってる。昔、クリストファー・ノーランの『ダークナイト・ライジング』を観たとき、バットマンの「コスプレ」が完全にジャマだと思ったけど、今回の『THE BOYS』を見て、その見解は正しかったと確信したね。バットマンの格好は、ティム・バートン版くらいの「とぼけたファンタジー」ならちょうどいいけど、ノーラン版くらい「真面目で深刻」なノリになると、もう滑稽。逆に言えば、バットマンをふつうの格好の「ガジェットおやじ探偵」にしたらきっとオモシロイと思っていた。やっぱりオモシロかった。

第六話くらいにから出てきた、他人の心を読むメズマーって、どっかで観たことをあると思ってすぐに気づいた。『シックス・センス』のあの子やん! ハーレイ・オスメント? こんな仕上がり!?

【追記2】(2023年11月17日)「シーズン1」を全話観た。最初の直感は全然当たってなかったけど、面白かったから問題ないよ。キャラクターの人物造形が複雑で好い。

【追記3】(2023年11月23日)第2シーズンを観終えた。
Stormfrontは、「宣伝(SNS等)で大衆を扇動」「ゴリゴリの人種差別主義者」「人体実験の推進」と、わかりやすい「ナチス・ドイツの亡霊」感だったけど、話が進むと、全くその通りだった。一時、アメリカの一部市民たち(ジョン・フォードとか、リンドバーグとか)にも熱烈に支持されたという点も、本物のナチスドイツと同じ。
ライアンは、きっと子供の頃の「孫悟飯」的な存在+展開になると思ったら、やっぱりなった。Stormfront、ご愁傷さま。
回を追うごとに、Homelanderが好きになっている自分に気づく。とにかく、登場人物が、超人一般人の隔てなく、全員がメンヘラ。特にHomelanderは、その圧倒的超人能力故に、「普通の人間が超人能力を持つと心が保たない」ことの最悪の「症例」になっていて面白い。第二シーズンの最終話の最後の場面で彼があんな事になったのも、心を寄せた女が実はナチの残党で、しかも、自分のレーザーも「平気」だったその女を、実の息子(ライアン)が、黒焦げの再起不能に陥れているという現実に直面したから。「最愛のヒト」をこんな目に合わせたのが、唯一の血縁(愛してもらいたくて仕方がない)だから、いつもの(怒りに任せた)仕返しもできない。それは、或る種の「八方塞がりな屈辱感・無力感」。「俺は何でもできる〜!」と月に向かって絶叫したくもなるだろう。
▼「アタマがポン!」は、超能力モノの古典『スキャナーズ』への敬意でしょうなあ。


【追記4】(2023年11月26日)第3シーズンを観終えた。
▼ソルジャーボーイ(キャプテン・アメリカ)の血の繋がりなど全く気にしないキャラが好い。作り手の「そんなソルジャーボーイと比べたら、家族を求めるホームランダーの方がまだまし」感が出ていて、笑った。
▼ブッチャーとホームランダーが表裏の関係にあるのはわかっていたけど、時効性Vで得た能力(目から出るレーザー/色違い)が同じなので、やっぱり、と確信した。
▼マインドストーム(だっけ?)の能力の「おかげ」で、ブッチャーは自身の「トラウマ」と正面から向き合うことができた。
▼ブラックノアール退場(ホームランダーに殺された)。ブラックノアールがずっとマスクを付けていたのは、ウォーズマン的な理由だとわかっていたけど、あの可愛いアニメのおかげで、それがソルジャーボーイによる「暴行」だと言うことはわかった。あと喋れないのは、その暴行で脳に損傷を受けたからというのもわかった。要するに、ソルジャーボーイって、ホームランダー以上のサイコパス。というか、ブッチャーの親父の「系譜」。ちなみにブッチャーの親父の「系譜」は、ブッチャー、ホームランダー、ソルジャーボーイ。
▼クイーン・メイブ退場(ソルジャーボーイとの相討ちという偽装。死んではいない。密かに引退。ただし、ソルジャーボーイの「核爆発」に巻き込まれた、スーパーヒーローとしての能力は失ったので、ホームランダーに親指で潰された右目は失った)。
▼2024年に第4シーズンが配信されるらしいけど、ブッチャーは余命一年宣告を受けてるし、ホームランダーは公衆の面前で一般市民をレーザーで惨殺したのに、支持者に「歓喜」を持って受け入れられてるし(まさに、トランプとトランプ支持者だよね)、なかなか、厳しい物語づくりになると思うけど、どうなんだ?

【3シーズンを通しての印象】
とにかく、人間と人間社会のあらゆる問題が暗喩も含めて盛り込まれていて素晴らしい。更に、どんな作品も「性的おもちゃ」や「政治的おもちゃ」にしてしまう現代のSNS社会がやりそうなことを、作品の中で全て先にやってしまっている点も痛快。所謂、「リアル路線アメコミ・ヒーロー」モノは、『THE BOYS』で究極に到達したという印象。もうあとは何を作っても、『THE BOYS』の簡易版や劣化版や譲歩版にしかならないだろう。
▼あと、『THE BOYS』を世に生み出したことだけでも、Amazon Primeには存在した価値があったと言える。