それはそうと、アクションに関して、庵野の言ってること(不満)は最初からわかったよ。
ガキの頃、ジャッキー・チェンの映画(テレビ放送)を夢中で観ていたら、後ろにいた親父(マグロ漁師)に「なんだ、それ、踊ってるのか?」と言われて、ムッとした記憶がある。今は分かる。親父が正しい。ジャッキー・チェンのカンフー・アクションの正体は「踊り」。庵野的に言えば「段取り」をこなしているだけなのだ。
UWFから始まって、リングス、プライド、バーリトゥード等々、今は誰もが、より「実戦」に近い「取っ組み合い」や「殴り合い」を「知って」いる時代。実戦に近づけば近づくほど、格闘戦は、地味で殺伐としたものになって「見栄えが悪くなる」ことを「知っている」のだ。「本気」度が増すほど、格闘戦は、見世物としては「身も蓋もない」感じになっていく。そういうものを既に大量に目にしている現代の観客にとって、庵野にダメ出しされていたライダーアクションや、ジャッキー・チェンのカンフーアクションのようなものは、どちらかと言えば「踊り」なんだよね。つまり、歌舞伎のチャンバラと同じ。様式美。庵野はそれがだめだと言っている。
つまり、仮面ライダーもショッカーも、「試合」に勝とうとしているわけでもなければ、「技」を見せつけようとしているわけでもなく、「改造」のせいで凶暴性に歯止めが効かなくなって、とにかく一瞬でも早く相手の息の根を止めようとしているわけで、その部分を表現するためには、「踊り」や「様式美」や「殺陣師がカッコイイと思っている動き」は邪魔にしかならない。
庵野の「誤算」は、〔見世物としては身も蓋もない、もはや殺陣とも呼べないような「殺陣」〕ですらつけられるのがベテラン殺陣師だと思っていたら、実際はそうじゃなかった、アレ?困ったな、ということだろう。まあ、どんな職業にも「職業病」というものがあるけど、殺陣師にも殺陣師の「職業病」があった、ということで。
【追記】庵野って、やっぱり、「作品よりも本人が面白い」系の人だよね。