2026年6月18日木曜日

(1)700万年後の四畳半

自転車の無灯火で職務質問されたときにうっかり偽名(オカバヤシハルオ)を使ったのが色々といけなかったのだろう。気づくと、700万年後の四畳半で、一人、復刻版の安い紙巻きタバコを吹かしていた。


ホモ・サピエンスは、遂に、この四畳半に一人きりとなった。


700万年後の世界の、これが現実である。


恐竜は一億年以上生き延びたと言われる。しかし、恐竜内のそれぞれの種は、やはりホモ・サピエンス並みに「短命」だったのではないだろうか? 同様に、ホモ・サピエンスという種は、事実上絶滅したが、「人間」そのものは健在である。


所謂、ホモ・サピエンスの後継者、輒ち[700万年後の現生人類]の学名は「ホモ・ストゥルトゥス:Homo Stultus」である。名付けたのは、言うまでもなく、絶滅直前のホモ・サピエンスたちだ(平然と「賢い人」を自称する恥知らずな愚か者ならではの無礼な行為)。


当然だが、700万年後の現生人類たちは、自分たちをそんなふうには呼ばない。彼らは自分たちを、単に、「人間」と呼ぶ。


ホモ・サピエンスが、自らの進化上の後継者を「ホモ・ストゥルトゥス」、輒ち「愚かな人」と名付けた理由は明白だ。ホモ・ストゥルトゥスの社会(或いは世界)では、科学が失われてしまっていたからだ。


いや、言い直そう。


ホモ・ストゥルトゥスが生きる700万年後の地球は、むしろ、科学の極北にある。しかし、その究極の科学を制御する能力を、ホモ・ストゥルトゥスは失ってしまったのだ。ホモ・ストゥルトゥスにとって、科学は、制御不能な自然現象の一種である。


ホモ・ストゥルトゥスは、[世界は「人知を超えた意図」によって「運営」されている]と信じている。この「人知を超えた意図」は、ちょうど、ホモ・サピエンスにとっての「神」に相当する概念だが、ホモ・サピエンスの「神」と違って、ホモ・ストゥルトゥスの信じる「人知を超えた意図」は実在する


「神」は、ホモ・サピエンスが自らの意図を自然現象に投影しただけの妄想に過ぎない。しかし、ホモ・ストゥルトゥスの「人知を超えた意図」は、他でもないホモ・サピエンス自身が科学技術の粋を集めて作り上げた「現実」である。それは「Extended Multi-Minds Architecture(EMMA)」という正式名称を持ち、地球を含む全宇宙の安寧のために、ホモ・ストゥルトゥスがホモ・サピエンスに「返り咲く」のを防いでいる