2022年10月10日月曜日

『職業"振り込め詐欺"』メモ

ナニカの切り抜き動画の中で岡田斗司夫がオモシロイと言っていた鈴木大介の『振り込め犯罪結社』を読んだら、著者がその「あとがき」でNHKスペシャル取材班の『職業”振り込め詐欺”』を薦めていたので、これも読んだ。

鈴木の本は、「悪」を糾弾しない私立探偵モノ風で、一気に読んでしまうほどオモシロかったが、NHKの本の方は、いかにもNHKっぽい生真面目さで、やや退屈だった。何より、「著者」が「犯人たち」の言動に対して、妙に怒ったり驚いたりして、(それがわざとでないなら)かなりオボコイと思った。

裏もオモテも関係なく、あらゆる商売が「詐欺」であることは、少し世の中が見えるようになれば誰でも自然に気づくこと。「詐欺」だからこそ、会社は「大きく」なるのだし、社長が豪邸に住んでいるのに平社員は安アパートに住んでいるのだ。そもそも商売で「儲け」られるのは、取引が「不誠実」だから。自分が百円で手に入れたものを、他人には二百円で譲り渡すからこその「商売」。その本質はどう取り繕ってもやっぱり「詐欺」。

オモテの世界の「合法な詐欺」が「真っ当な商売」と見做され許されているのは、言ってしまえば、「この程度までの騙しなら、お互い様なので、ヨシとしましょう」という合意のおかげ。要は「程度」の問題。「相手からカネを騙し取って懐を潤す」という仕組み自体は、「真っ当な商売」も「犯罪としての詐欺」も全く同じ。という「事実」に、本に登場する「エリート」詐欺師たちは気づいている。将来の起業のための資金を、銀行の融資で手に入れるのも、振り込め詐欺で手に入れるのも、実質的に「騙し取っている」という点では同じだ、と。

最初にも書いたが、こうした認識は別に新しいものではないので、特に、脅威も驚きも感じない。むしろ、与えられた環境に適応しようとする各生物個体の振る舞いを眺めているような気分。つまり、自然淘汰の実例。もちろん、人間の本分は遺伝子に抗う知性現象なのだから、自然淘汰の言いなりになっていては、人間である|甲斐《かい》がない。