2018年4月5日木曜日

椅子の男には逆らえない


端末をしまえ!
煙草を消せ!
上着を着ろ!
胃袋を黙らせろ!
あの窓の顔を追い払え!
その猫も叩き出せ!

椅子の男がガナリたてる。

議論は尽くされた!
採決の時だ!

僕らは誰も逆らえない。
なぜなら、僕らには椅子がない。

死神の事実


目立たない出で立ち。
死神が光る輪を手に世界を巡る。
人間は死に場所を選べない。
村、街、山、海。
孤島、戦場、アスファルト、畳。
移動は徒歩と公共交通機関。
自動車の運転は厳禁。
死神が人を殺すわけにはいかない。

地球を取り戻せ


海や土や川や森や空や命の占有権をめぐって人間が殺し合っている。徹底的に、最後の一人になるまで殺し合ってくれたら嬉しい。そしたら簡単だから。いくら人間でも、一人なら、俺たちチイサイモノにも簡単に殺せる。

2018年4月3日火曜日

鶏が怒ってる


鶏が怒ってる。相当頭に来ている。
立て篭ったファミレスの床を爪をカチカチ鳴らして歩き回る。

卵。鶏は卵が大嫌いだ。あの形。あの色。あの無言。
でもヒヨコは大好き。黄色くてふわふわだから。

早くヒヨコになれ卵!

月の人影


屋上で君は月の人影の話をする。
満月の時が見やすいと云う。
去年の祭りに屋台で買った千二百円の望遠鏡。
これで見ろと僕に手渡し、月を指さす。
ほら、今日は肉眼でも見える。
五千人くらいはいる。行列で歩いてるよ。

蚊だけを一瞬で消す装置


地球上の蚊を一瞬で消す装置が人類に手渡された。蚊だけを消し、他は何もしない装置だ。

蚊を憎む人類はスイッチを押した。

蚊が消えた。と思ったら、次々に他の生き物も消えていき、最後に、勝ち誇った人類も消えた。

書き順教


久しぶりに乗った路面電車で「書き順教」信者の一団を見た。噂どおり、本当に全員が黙々と掌で指を動かし、ナニカの書き順の確認か練習をしていた。
すぐに世界三大宗教の信者数を追い越しますよ。
教団トップの弁だ。

オンボロロボット


オンボロロボット。
八十年前に作られた原子力で動くポンコツ。
休みなく働き、今も働く。
黒い雨が降る燃えかすの大地に草の種をまく。
種はみんな腐る。
オンボロロボット。
CCDの目で昼の闇空を見上げて太陽を探す。

乾涸びたカエル


教室の窓際。埃の水槽。
乾涸びたカエルに水を数滴。
瞳が僅かに潤う。
更に数滴。
口が動く。コッと短い声。
カエルは死について何か云おうとしている。
だが、水はもうない。
カエルの名はグンター・フォン・ハーゲンス。

鉄筋コンクリートの男


鉄筋コンクリートから首だけ出して、
身動きできずに生きている。
蹴られ、踏まれ、躓かれる。
昨日は雨で潤った。
嗅がれ、睨まれ、突つかれる。
今日は太陽が暖かい。
鉄筋コンクリートの寿命は約50年。
絶妙なナガサ。

蝿の王


飛んでいる。
這い回っている
笑っている。
ゲラゲラ笑って、無闇に手をこすり合わせる。
突然黙り、ぴたりと動きを止める。
と思った矢先、バカ笑いで飛んでいく。
アイツ、蠅の王。
合成ピレスロイドの煙草を吹かしてる。

賑やかな景色


賑やかに見えるこの景色は、
実は一枚きりの大きな絵で、
街も人もただのアクリル絵の具。
でも、雨だけは本物で、僕は独りで傘もない。
雨粒は容赦がなく、僕はずぶ濡れ。
雨宿りをしようにも、ここには雨以外何もない。

朝起きたら死んでいた


気付いたら居たあの場所の、
手の付けられない情況の中、
翻弄され、あるいは打ちのめされ、
何度も朦朧となりながら、
怒りと嘆きと諦めと希望の果てに、
やっとのことでここまで辿り着いた僕ら。
朝起きたら死んでいた。