○劇場アニメ版『アキラ』2021年12月26日/大友克洋全集発売を記念して、期間限定でYou Tubeで公開されていたので観た。ちゃんと観たのは多分、2回目。改めて見ると、かなりアタマの悪い作品。拡声器でがなり立てているけど中身はない演説という印象。大言壮語感。
この作品での超能力の有り様は、SFというより神秘主義。即ち、「熱心に祈れば願いは通じる」系のふわっとした設定。もっと言ってしまえば、例えば、窮地に追い込まれた悟空やケンシロウや承太郎が「怒り」を爆発させて形成を逆転させる、あのご都合主義と同じ。
もう一つ。人物造形が恐ろしく古臭い。「若者」も「オトナ」も、そして、社会全体の空気も、ことごとく、1960年代の「学生運動」風味。だから、近未来(というか時代設定はまさに「一昨年」なのだが)のオハナシを観ているというより、むしろ「時代劇」を観ている感覚に近い。ああ、こういう人たちがいた、こういう社会ってあったよね(あったんだろうねえ)、という感覚(感慨)。
また、学生運動レベルのテロ活動、明るく「健全」な暴走族、神秘主義的な超能力、社会不適合者的科学者、カネが全ての政治家、実務的で頼りになる軍人、その全てが薄っぺらい。ストーリーのための操り人形たち。日々を生きている人間たちという感じがまったくない。
原作の漫画の方は、都合3周くらいしたはず。細かいところはいろいろ忘れてしまったが、このアニメ版よりはもちっと噛みごたえのある作品世界だったような印象がある。アニメ版『アキラ』は、その漫画版『アキラ』よりは、設定等をかなり大げさにした『童夢』と考えたほうがいいかも。
オハナシはともかく、アニメーション(動画)は素晴らしいね。