「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という問いに対する答えは既に出ている。我々は、生命現象に依存しない知性現象を作り上げたのち、我々の「遺産」の全てを、その「真の知性現象」に譲渡し、我々自身は穏やかな「自発的絶滅」を遂げる。これが、我々人類の「役割」であり、我々人類の物語の最も理想的な結末である。今以上の科学力だけがこの理想的結末を実現できる。故に、科学のみが「我々人類が取り組むに値する活動」即ち「生業」であり、それ以外の人間の活動は全て、単なる「家事」に過ぎない。
ヒッチコック『VERTIGO(めまい)』のオモシロサの一つは、2周目以降では、スコッティに対するマデリーンの言動(振る舞い・セリフ)の「意味」が違ってくること。マデリーン(の中の人)の「演技」と「本心」の〔2つの「文脈」あるいは「立場」〕が出たり入ったりしているのが分かるようになるから。もちろん、スコッティにはその区別はつかず、全てはマデリーンの「心の病」の表れくらいに思っている。