「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という問いに対する答えは既に出ている。我々は、生命現象に依存しない知性現象を作り上げたのち、我々の「遺産」の全てを、その「真の知性現象」に譲渡し、我々自身は穏やかな「自発的絶滅」を遂げる。これが、我々人類の「役割」であり、我々人類の物語の最も理想的な結末である。今以上の科学力だけがこの理想的結末を実現できる。故に、科学のみが「我々人類が取り組むに値する活動」即ち「生業」であり、それ以外の人間の活動は全て、単なる「家事」に過ぎない。
2019年4月25日木曜日
■『教えて下さい。富野です』メモ
どうせ安彦良和の「ジ・オリジン」しか読まないんだから、立ち読みで済ませられるときはそうしている「ガンダムA」の7月号は、付録付きで本体がひもで縛られていたから、買って読んだ。
買って読むときは「ジ・オリジン」以外もちょっと読む。四コマ漫画とか「松戸アングラー隊」とか、トニーたけざきのヤツとか、気の抜けた感じの漫画を主に。
そして、ガンダム生みの親である富野監督が各界の〈達人〉を訪ねて対談する「教えて下さい。富野です」のコーナー。これも読む。少し前の、安彦さんとの特別対談のときにも感じたが、富野さんには、ちょっと「大思想家」の素養があって、世間の常識とか、学者さんの良識とか、評論家の思考の範疇には収まりきらないことをずばっと言うことがあって、それがかなりオモシロイ。まあ、そんなにオモシロクないときもある。
で、この7月号の対談は、オモシロかった。対談と言っても、ゲストの政治学者よりも、富野さんの方が熱弁していて、しかも、ゲストの政治学者の言ってることよりも、富野さんの言ってることの方がずっと切れ味がよくて、圧も大きいから、富野さんのインタビュー記事みたいになっているけど。
たとえば、今度の震災後の日本の政治のグズグズ感を指摘する中で、
「……新しい論を持って国家を立て直していく人材が果たして出るのか。僕は既存の政治家にはいないと思う。今、政治の中心にいるのは、団塊の世代という日本が一番ハッピーな時代を享受してきた人たちです。その人たちがリアリズムを備えたハードインテリジェンスを持っていないということが今回露呈したわけです」
というようなことをスラっと言えてしまえる。団塊世代以外の人間は、誰しもがうっすらと気付いていること(団塊世代の無邪気すぎる人生観世界観がもたらす危うさは政治には不向き)なんだけど、それをスラっと表明できるところが、富野さんが「大思想家」としての素養を持っている証。
これ以外にも、この号の富野語録には刺激的なものが多くて楽しめた。
更に、こういう話を、ふんぞり返った論壇誌などではなく、漫画雑誌で読めてしまえるところも痛快。
ああ、それにしても、「ジ・オリジン」もあと少しで終わりかあ。
(2011年6月4日土曜日)