2021年10月07日 木曜日
天気:晴れ。夜少し雨。猫散歩なし。
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『必殺仕置人』鑑賞。第10話「ぬの地ぬす人ぬれば色」。
そもそもこのエピソードの発端となった「事件」では「本当の悪人」はいないことに気づく。舞台が大奥に移ってからの「いじめ」が相当に陰険なので、「お部屋様」の印象が相当悪いが、そもそもの「友禅を買う買わない」の段階ではそれほどでもない。むしろ、あの悶着が殺人事件にまでなった一番の原因は、間違いなく、断固として友禅を売ろうとしなかった職人のオヤジ。「お部屋様(側室)」は、ある時点で「諦めて/腹を立てて」帰ろうとしているし、功名心に逸った侍(伊賀者)も友禅を川から「強奪」してくるが、金はちゃんと払っている。侍が、職人たちを斬ったのは、彼らが自分の主人(お部屋様)の籠に迫ってきて、所謂「無礼」を働いたからで、彼の職務上「問題」はない。
「悪人」と言うなら、逆に、「仕置」の相手が大奥の女だということで、いつも以上に喜んだり、コーフンしたりしている、鉄や主水の方が上。彼らの異常さや下劣さがちゃんと描かれていて、好い。
このように、最初の『仕置人』は人物造形がしっかりしている。仕置きされるためだけに存在する「悪者のための悪者」はほとんどいないし、仕置人たちにも「正義の味方」要素はゼロ(基本、自分が頭にきたからぶっ殺している。要するに単なる仕返し)。すなわち、登場人物たちは皆、自分なりの「世の道理」に従って生きている。
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久しぶりに『ANIMATRIX』の短編三つを見た。ザイオンアーカイブのヤツ2編と、『BEYOND』という日本のどこかの町が舞台のヤツ。本編よりも、この3編(ザイオンアーカイブは前後編だから、実質2編だけど)の方が、物語としては「上」だと思う。『BEYOND』の「家の中に降っている雨」は、確実にタルコフスキーの『ストーカー』へのオマージュ。というか、この『BEYOND』まるごとが、『ストーカー』へのオマージュだろう。