2021年10月30日土曜日

無音のマチルダ

2021年10月29日 金曜日



天気:晴れ時々雨。暖かい。16:05~16:20猫散歩。



ワクチン副反応(三日目):

もうほとんど意識することはない。注射された左上腕を触ると、若干の鈍痛はあるが。


memo:

猫の腎臓病を治す薬を、東京大学の教授が開発しているというニュースを昨日ラジオでたまたま聞いた。治験薬を作ることころまで漕ぎ着けたのだが、今回のパンデミックで研究が中断してしまった。そのことがこの夏、時事通信か何かで報道され、なんと、わずか数ヶ月で数億円の寄付が集まってしまったらしい。おかげで研究開発再開の目処がついたとか、そういうオハナシ。もちろん、この教授の最終目的は人間用の治療薬を開発すること。


曰く、AIMというタンパク質は、腎臓などに溜まった老廃物につける「タグ」のような役割をする。カラダはその「タグ」を目印にして臓器の掃除をするのだが、猫には先天的にこのAIMが存在してない。猫が腎臓病で命を落としやすいのはそのため。実際、腎臓病がかなり進んだ猫に、開発段階のクスリを投与すると、元気になるという。AIMはタンパク質なので飲み薬にはできないので、点滴で投与する。



岡田斗司夫が、アムロの夢に出てきたマチルダの声が聞こえない理由(同じ夢に出てきたブライトの声は聞こえている)を、アムロの成長を表現したものだと解説していたのを聞いて、また余計のことを考えてみた。


一番、誰でも思いつき、おそらく「正解」なのは、現実のあの場面のアムロにとって、「憧れ+初恋のお姉さま」が、ほとんど初めて、直々に自分に話しかけてきたことに「有頂天」になり、ぽーっとなってうっとり見とれていたせいで、最初からマチルダの声は「聞こえてなかった」ので、夢の中でも、マチルダの口だけが動いて(うっとり見つめているので映像は鮮明に覚えている)、肝心の発言の内容はまったく聞こえない、というだけのこと。


あるいは、マチルダが実際にアムロに言った内容(「ブライトさんの言う通り。寝るのもパイロット仕事のうちですよ」的なこと)は、特段アムロがマチルダに言ってもらいたい内容ではなかったので、「要らない」から夢の場面から消してしまった(消えてしまった)、というだけのこと。例えば、美人教師に夢中の男子中学生が、授業内容は上の空でずっと彼女の姿を眺めている、というようなもの。そういうことは「誰にでも思い当たること」なので、特段の「解説」は要らない。あの無音のマチルダは、アムロの身になれば、誰でもすぐにピンと来る夢の有り様。


更に言えば、あの夢の場面でマチルダが、実際と同じように、新米パイロットに対するアドバイスを喋ってしまうと、それを夢に見ているアムロのマチルダに対する恋心が視聴者にうまく伝わらない。アムロは「マチルダがくれたアドバイスの夢」を見ているかのように受け取られるからだ。アムロのあの夢は[マチルダの姿を見ていたいアムロの願望]であって、[マチルダのアドバイスを思い出したり、噛み締めたり、兵士としてなるほどと納得している夢]ではないことを「わかりやすくする」ために、マチルダの声は聞こえなくなっている。


まあ、それだけのことだろうけど、しかし、更に穿った解釈もできる。


即ち、TV版のアムロの夢の中に出てきたマチルダの「無音」が、後の劇場版では「ニュータイプの発現」を象徴するあの有名な「大丈夫」になったのだ。夢の中のマチルダは実はアムロに対して「これからあなたは絶体絶命の危機に陥るけれど、今からここに来る人が命を捨てて助けてくれるから大丈夫よ」というようなことを言っているのだ。その証拠に、その夢からアムロを目覚めさせるのは、他でもない、後にアムロの命の恩人となるリュウ、その人。


この「屁理屈」でひとつ重要なのは、TV版ではリュウが死んだあとにマチルダが死ぬが、劇場版ではマチルダが死んだあとにリュウが死ぬというふうに、順番が入れ替わっている点。明らかにニュータイプでもなんでもないマチルダが生きているうちから、遠く離れたアムロの危機を察知して、「大丈夫」というテレパシー的なメッセージを「届ける」のはいかにも不自然だが、死んで「時空を超越した存在」(失笑!)になってしまえばそういうこともアリかな、とそういう理屈。「死んだ人間は生きてる人間よりもすごいことができる」信仰のあるっぽい富野さんはそう考えそうだし、同じ信仰を持っている多くの一般視聴者も、「ニュータイプでなくても、死んだら、マチルダにもそういうこともできてもおかしくない」とあっさり納得しがち。だから、死んだマチルダは、あんなにもあからさまに超常的なメッセージをアムロに届ける。夢に出てきた生きているマチルダのよくわからない無言の仄めかしとはまるで違う。


ところで、「大丈夫」をやるために、劇場版ではリュウとマチルダの死ぬ順番が入れ替えたのか? 他の理由で順番を入れ替えたら、たまたま「大丈夫」がやれたのか? あのマチルダさんの「大丈夫」は「これぞニュータイプ能力の発露」な場面なので、「大丈夫」をやりたいがために、マチルダを先に殺すことにしたような気がする。知らんけど。


ついでにもう少し余計な戯言。


TV版のアムロが見た「無音のマチルダ」の夢は、アムロ自身のニュータイプとしての「予知能力」の現れ。予知能力という言葉が大げさなら「虫の知らせ」と言い直してもいい。確かに、ア・バオア・クー戦の前に、アムロ自身がカイやセイラに「ニュータイプになって未来のことが分かれば、苦労しません」と言っているが、実際には、例えば、マチルダが殺される直前に、ミライはちゃんと「少し、間に合わないかもしれない」とつぶやき、マチルダがそれを聞いて怪訝な顔をしているのだから、やっぱりニュータイプには人並み以上に「虫の知らせ」を感じ取る能力があるのだ。


こんなことも言える。


件の夢を見た時点のアムロにとって、マチルダは、「チベット死者の書」が言うところの「守り本尊」的存在。だから、アムロ自身のニュータイプとしての能力が、夢の中でマチルダの姿を借りて、「このままでは、今からここに来る人が、あなたの身代わりになって死ぬことになります」と伝えているのだが、まだそこまでニュータイプとして「開眼」してないアムロには、その大切なメッセージが聞き取れない。我々は、これによく似た状況を知っている。そう、『Twin Peaks』だ。クーパー捜査官は、せっかく巨人の姿を目にしても、肝心の警告メッセージを「理解」できず、被害者を救えない(しかも二度も!)。


「守り本尊=当人の影」説を、もっと突っ込んでもいい。


最終回にホワイトベースの連中が、それぞれに聞く「アムロの声」も、各々の「守り本尊」がアムロだから「アムロの声として」聞こえているのであって、正体は、各自のニュータイプ的な洞察力が発っするメッセージ。つまり、スーパー「サードマン現象」。


ま、もういいや。