2019年3月8日金曜日

7-3:低気圧と高気圧


三つ目のギニグは、大きな口から煙を吐き出し、黒い部屋に風景を出した。

オトナは、気象予報士に教えてもらわなくても、天気図さえ見れば、天気は分かるというので、コドモはその理由を訊いた。オトナはテレビ画面の天気図の或る部分を指して、ここがコーキアツだと言った。それから別の部分を指して、ここにテーキアツがあると言った。コーキアツがここにあって、テーキアツがここにあるから、今は雨だが、明日には晴れると言った。

そして、今日、天気はその予言の通りになった。

しかし問題は今日の天気図である。コーキアツもテーキアツも、天気図の上では昨日と全く同じ場所にあった。コドモは不審に思ったので、その事実をオトナに指摘した。オトナは笑って、そんなことがあるものか。今日の天気図にはコーキアツしかない。テーキアツは西に移動している、と答えた。しかし、何と言われようと、コドモの目には、コーキアツもテーキアツも、昨日とまったく同じカタチで、全く同じ場所にある。

カラカワれているのか?

コドモは思い余って、これがコーキアツだろう、と昨日と同じ場所にあるコーキアツを、テレビ画面越しに指で押した。オトナはそうだと答えた。ソウカやはりそうだ、とコドモは安心した。そこで、今度は、昨日の天気図と全く同じ位置にあるテーキアツを指で押して、これがテーキアツだろうと確認した。すると、オトナは意外にも、それもコーキアツだと言い放った。昨日と全く同じ場所にあり、全く同じ形をしたものを、昨日はテーキアツと言い、今日はコーキアツと言うオトナの対応に、コドモは当惑した。

むしろ愕然とした。

大きな謎がコドモの中に生まれた。なにか、自分には分からないものが、オトナには見えているらしい。オトナは確かに昨日、天気図の左側にあって、帽子かぶって右を向いたペルー人のようなものを指して、これがコーキアツだと言った。それから、天気図の真ん中あたりで左を下にして泳いでいる細長い魚のようなものを指して、これがテーキアツだと言ったのである。その二つは、今日の天気図でも、昨日のそれと全く同じ形をして、まったく同じ場所にある。天気図は同じだが、天気は変わるというだけならマダイイ。同じ曇りでも雨は降ることもあれば、降らないこともあるからだ。しかし、オトナは、昨日テーキアツだと言ったものを今日はコーキアツだという。その謎を何としても解かねばならない。とコドモは思った。