2019年1月21日月曜日

■風船より定規で


遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることが、なぜ、宇宙が一様に膨脹している証拠になるのか?

観測すると、遠くの銀河から到達する光は赤方偏移を起こしている。赤方偏移は光のドップラー効果で、光源が遠ざかっていることで波長が伸び、もとの光よりも赤く見える現象のことだ。遠ざかる救急車のサイレンの音程が低くなる「音のドップラー効果」は有名。発信源が遠ざかると、音は低くなり光は赤くなる(因みに、逆の場合、音は高くなり光は青くなる=青方偏移)。この赤方偏移の度合いは、遠くの銀河から届く光ほど強くなる。これは、より遠くの銀河ほど、より速く遠ざかっていることを意味する。光のドップラー効果を考えるとそうなる。ではなぜ、遠くの銀河ほど速く遠ざかるか? それは宇宙が一様に(どの場所も同じように=中心点を持たずに)膨脹しているからだ。

ここで躓いて、最初の疑問が頭をモタゲる。

そこで必ず持ち出されるのが「膨らむ風船」の喩えで、これが実にナッテナイ。分かり難いことこの上ない。風船の喩えとはこうだ。表面にたくさんの銀河を描いた風船がある。この風船を、より大きく膨らませると、離れた場所に描かれた銀河同士ほどその距離が大きく広がる。以上。全然ピンと来ない。風船が膨らむことで全ての銀河が一様に離れるのはイメージできるが、より離れた銀河同士の方が〈より大きく=より速く〉離れるかどうかがよく分からない。

風船より定規の方がずっと分かりやすい。

次元をひとつ落して、宇宙を一本の定規と考える。定規には1センチごとに目盛りがあり、目盛りごとに銀河がひとつあると考える。1センチ離れた銀河同士は1センチの間隔で、10センチ離れた銀河同士は10センチの間隔。即ち「近くの銀河」と「遠くの銀河」だ。次に、この定規の1センチの目盛りが全て1ミリずつ伸びる(=宇宙が一様に膨脹することに相当)。定規の各1センチがそれぞれ1ミリ伸びて、1センチ1ミリになる。最初1センチしか離れていなかった近くの銀河との距離は1ミリ増えるだけだが、最初10センチ離れていた遠くの銀河との距離は一気に10ミリ(=1ミリ×10個)増えることになる。これなら「宇宙が一様に膨脹すると遠くの銀河ほど速く遠ざかる=遠くの銀河ほど速く遠ざかるのは宇宙が一様に膨脹しているからだ」をイメージしやすい。

膨らむものを膨らむもので喩えちゃダメだよ。

2017/06/16 アナトー・シキソ