2020年5月17日日曜日

博多大吉華丸が司会の「奇病」を紹介する番組を見た。記憶が2時間しか持たない16歳のアメリカ女子高生。一年前の6月11日に出かけたパーティで、客の上にダイブしていた男が上から降ってきた事故がきっかけ。


直後の症状は左脚の震え。膝の「治療」を済ませ、車で家に帰る途中で、突然笑い出したかと思うと痙攣を起こし、そのまま病院へ。


CT検査でもMRI検査でも脳に異常は見つからず、医師や薬物やアルコール依存を疑うが診断名はつかず。


家に帰ってからも左腕が震えたりしていたのだが、そのうち、記憶が消えてしまうようになる。事故があった6月11日以前のことは覚えているが、それ以降に覚えた新しいことはすべて2時間ほどで消えてしまう。つまり、彼女は事故以来ずっと6月11日を繰り返し生きているという状態。


ユタ州にあるCognitive FXという脳の専門クリニックでfMRIで検査をした結果「脳震盪」とわかる。すなわち、脳の様々な部位に充分な血流が届いていない状態。特に数値が低かったのが「海馬」の血流。海馬は短期記憶を司る部位。新しいことが覚えられないのは当たり前と言えば当たり前。


治療法が面白かった。薬物や手術など一切行わず、有酸素運動といわゆる「脳トレ」の類のゲームをすること。最初の頃、治療の途中でめまいがして倒れたり、頭痛が起きたりするが、それも全て、事故以来血の巡りが悪くなっていたところに、血が流れ始めた証拠。4日もすると、そういう「副作用」はなくなり、表情も目に見えて生き生きしてくる。10日で全ての治療は終わり、なんと、記憶が消えてしまうこともなくった。


治療が終わった後になって気づくのは、治療前の彼女が実は「ぼーっと」している状態だったと言うこと。つまり、もともと、おっとりしたおとなしい性格なのではなく、脳震盪のせいで脳の血流が滞っていたために、本来の彼女よりもslowになっていたのが、治療後の彼女の生き生きハキハキした様子から逆に分かった。


これを見て思ったのは、もしかしたら「生まれつきおっとりした性格」だとか「おとなしい」とか「のんびりした」とか言われている人間の多くが、実は単に「脳の血流が標準より少なめ」なせいで、或る種の「障害」を被っているだけなのではないのか、ということ。


別の面白かった症例は、「思い込み」で「食べ物が敵」になっている若い女たちの話で、これの治療は、京極堂の「憑物落し」。