2020年12月16日 水曜日/曇り冷える
You Tubeにどこかの誰かがアップしてあった、中井貴一が金田一耕助を演じたテレビ朝日の新春ドラマスペシャル『犬神家の一族』を観た(1990年頃の作品)。何か、もしかしたら、いちばん有名な石坂浩二版金田一の『犬神家』よりも、こっちのほうが好いかもしれない。中井貴一版の方が、登場人物たちの人物造形に厚み、すなわち説得力がある。そもそも原作の人物造形が薄っぺらのペラッペラだし、石坂浩二版のも相当薄っぺらいから、深いと言ってもまあ「ふつう」のレベルなんだけど、それでも、金田一耕助モノでは、この「ふつう」のレベルの人物造形ができてるものはほぼ皆無なので(みんな、連続殺人事件を成立させるためのつじつま合わせの人形でしかないので)、この中井貴一版がとても「好い」もののように感じるのだろう。
あと、昨日も書いたが、やっぱりフィルムの質感が美しい。それも「説得力」が増す要因。石黒賢は棒読み。
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岡田斗司夫によれば、電子書籍が今の値段の3分の1くらいになると、逆に紙の本は今の値段の3倍くらいになる(おそらく、出版社が経営を維持するために、電子書籍分の減収を、紙書籍分に上乗せするからだろう)。で、たとえば、今、電子も紙も600円の漫画の電子版が200円になると、紙の方は1800円になる。これはざっと見て、200円と2000円で10倍の差。もちろん、この価格差は漫画本に限らない。全てのジャンルの出版物で起きる。そうなった場合に、電子書籍だけで出版される本と、紙だけで出版される本が生まれ始める。大衆車に対する高級車、「かっぱ寿司」に対する「すきやばし次郎」みたいなことが起きる。すると、電子書籍ばかり読む貧乏人と、紙の本を読む金持ちとの間に「格差」が生まれ、格差社会になる。岡田斗司夫によれば、金持ちと貧乏人が存在するだけでは格差社会ではない。金持ちと貧乏人が、互いの価値感を理解できなくなった社会が格差社会である。岡田斗司夫が中世ヨーロッパを野蛮人の社会と呼ぶのは、彼らが格差社会を形成していたからだ。一方、日本は室町以降ずっと、農民から武士までが互いの価値観を理解はしていたので格差社会ではなかった。つまり洗練された社会だった(『タモリ倶楽部』のような?)。電子書籍には安くなってほしいが、そうした洗練された社会を失うのも惜しい、というのが岡田斗司夫の意見。