2020年12月17日木曜日

「質問をしても答えない人間というのは、非常に興味深いものだ」


 2020年12月17日 木曜日/雪

ヒッチコックの『ロープ』をPrime Videoで観た。吹き替え版。いきなり冒頭からの20分間、フィルム一巻が終わるまでの(右上にパンチが出るまで)超長回し(オープニングのスタッフスクロールがあるから、正味の長さは15分ほどか?)。その15分後(全体の35分ごろ)に2回目のパンチが出たあと(ブランドンが、フィリップが鶏を絞め殺す話をした直後)、窓の外の空の色が変わっている(夕焼けになっている)。51分頃に3回目のパンチ。59分に、ブラントンの背中のアップで画面が真っ暗になる。そこでカットしているはず。このときパンチは出ない。69分頃にパンチ。73分頃に、ルパート(ジェイムス・スチュアート)がチェスト(デビッドの死体が隠されている)の天板を開けた時に画面が真っ暗になる。ここでまたカットしたはず。


とにかく長回し長回しの変な映画。というか、これが一つの「売り」なのかもしれないし、もしかしたら、元は一幕もの舞台劇だったのかもしれない。そういう雰囲気はある。割と面白かったが、作品の思想は軽め。最後のルパートがブランドンに向かってする「演説」が全て。殺す権利を持つ「優れた」人間が誰で、殺されても仕方がない「劣った」人間が誰かを、個人としての人間が勝手に決めることなど許されないし、できない、というハナシ。


「質問をしても答えない人間というのは、非常に興味深いものだ」パーティの最中、ピアノを引いているフィリップにルパートがいろいろと訊く場面)



岡田斗司夫ゼミのアップグレード動画のハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』の解説に触発されて、kindle版の『月は無慈悲は夜の女王』を買った。ポイントがあったから、200円ちょっとで手に入った。


冒頭部分でいきなりやられた。50年近く前に、もう、知性もしくは自意識を持っているとしか思えない機械(コンピュータ)がどーんと出てきて、一人称の語り手と語り合う。そこで提示される、知性は「有機生物の専売特許ではない」という考え方。その通り。これだから、自己慰安以外にフィクションなど書く理由はないのだ。あなたの思いつくフィクションのための「とびっきりの」アイディアは、50年も100年も前にもう誰かが思いついている。ついでに言うなら。あなたが思いつく思想/哲学の「革新的」アイディアは、何千年も前にとっくに語り尽くされている。