2021年1月27日水曜日

『コロンボ』の21話「意識の下の映像 Double Exposure」で、長年の「懸案」になっていた謎に、一応の説明がついたのでメモしておく。

2021年1月27日 水曜日/

【メモ】

21年には、我々はリモートワークのマイナス面に対処しなければならなくなるだろう。在宅勤務は短期的には効率性の向上をもたらすが、長期的な業績を牽引するはずのイノヴェイションを阻害する危険性がある。実際、効率性はイノヴェイションの敵だ。なぜなら基本的に、イノヴェイションとは探索のことだからだ。みながひとりで仕事をしていたら、人々が交流して新しい可能性を探索するのは困難だ。


このジレンマへの解決策は、人工知能(AI)がもたらしてくれるだろう。探索と効率性との間の本質的なトレードオフは、AI研究者の間ではよく知られている。研究者たちがしばしば取り組まなければならない問題のひとつは、すでに試したことがあり通常は何らかの見返りをもたらす行動に対して、まだ試していない行動のアルゴリズムをどのくらいの頻度で取るべきなのか、という問題だ。


(Carl Benedict Frey「AIがリモートワークに偶然の出会いをもたらす」 WIRED VOL.39 p111)



『コロンボ』の21話「意識の下の映像 Double Exposure」で、長年の「懸案」になっていた謎に、一応の説明がついたのでメモしておく。すなわち、ケプル博士の[映写技師ホワイト殺害]のアリバイの話。


1)映写機は2台ある。

2)映写技師ホワイトは1枚のコインを使いまわしている。

3)コインは、「今、映像を流しているフィルムが終わりに近づいたことを映写技師に知らせるためだけ」のもの。

4)2台の映写機はお互いに自動的に切り替わる。


もし殺人事件が起きていなかったら、

1)ホワイトは、映写機Aに1巻目のフィルムをセットして、フィルムの「ケツ」にコインを挟み、映写機を動かす。

2)コインが落ちたら、a)映写機Bに2巻目のフィルムをセットして、床から拾ったコインを、2巻目のフィルムの「ケツ」に挟む。あるいは、b)既に映写機Bにセットしてあるフィルムの「ケツ」に、床から拾ったコインを挟む。

3)映写機Aのフィルムが終わったら、自動で映写機Bに切り替わる。

4)ホワイトは、映写機Aに3巻目のフィルムをセットする。


しかし、映写機Aの1巻目のフィルムからコインが落ちる前に、ホワイトは殺されたので、映写機Bにセットされたフィルムの「ケツ」にはコインが挟まれなかった。この場合、ホワイト自身によって映写機Bに予めフィルムがセットされていても、犯人が自分で映写機Bにフィルムをセットしても同じ。肝心なのは、犯人がフィルムの「ケツ」にコインを挟まなかったということ。犯人は、そんな「映写技師たちの常識」は知らないのだから当然だ。


長年「謎」だった理由は、何より、2台ある映写機に、予め1巻と2巻のフィルムをセットし、それぞれの「ケツ」にコインを挟んでいたら、コロンボの言う「2台目の映写機の下にコインが落ちてなかった」という事態は発生しないだろうという、製作者に対する「不審」。映写機が2台あるのなら、プロとして絶対にそうした方が間違いがなくていいのにそれをやらないのは、つまりこれは、アリバイ崩しのための物語上の「無理強い」だと感じたから。


しかし、考えてみればこれは「たしかにそうだが、ホワイトという映写技師はそういうやり方をしない」と言われてしまえばそれまでのこと。


もう一つは、コインが落ちることで、映写技師は「映写機の切り替え」の時刻が迫っていることを知るのだと思い込んでいたこと。つまり、映写機の切り替えは手動でやらなければならないと思い込んでいたこと。


しかし、英語字幕を見てみると、単に「change」と言っている。それを勝手に、1巻目と2巻目の切り替えすなわち、映写機Aから映写機Bへの切り替えだと思い込んでいたのだが、本当は、映写機Aにセットされたフィルムを1巻目から3巻目にchangeするということなのだろう(2巻目は映写機Bに既にセットされている)。で、1巻目から落ちたコインは2巻目のケツに刺す。で、2巻目が映写が進んでそこからコインが落ちたら、今度は映写機Aの3巻目のケツにそのコインを拾って刺す。


そもそも英語のchangeに「切り替え」のようなニュアンスはないんじゃないかとさえ思った。切り替えるなら「switch」なんじゃないか、と。changeというときは、「一つを取り除いて、別のものに置き換える」というニュアンスなんじゃないか、と。しかしまあ、これはよく知らない。


コインは映写機の切り替え時刻が迫っていることを知らせるためだという誤解が、映写機は手動で切り替えなければいけないはずという思い込みを生み、結果、2巻目のフィルムの上映が始まった時刻(犯行時刻)に、犯人は映写機を切り替えるために犯行現場にいたはずだという誤った結論に達したのだが、しかし、事実として、犯人は2巻目の上映の始まった時刻である7時半からずっとコロンボと一緒に研究所にいたということを、コロンボ自身も認めているという、わけのわからない展開になって、すっかり混乱したというわけ。しかし、2巻目のフィルムがセットされた映写機Bが自動で動き始めるのなら、その問題は消える。そもそも、フィルムのセットや映写機の切り替えなどの作業が映写技師でもない犯人にできたのかという問題もなくなる。映写機Bに予め「2巻目」がセットされていたら、犯人はそのまま犯行現場を立ち去るだけでいいからだ。