2021年1月19日火曜日

『Twin Peaks: The Return』の制作開始が公けになってすぐに、一時的に、Lynchが監督を降りる事態になったことがあった

2021年1月19日 火曜日/大雪

『Twin Peaks: The Return』の制作開始が公けになってすぐに、一時的に、Lynchが監督を降りる事態になったことがあった。Lynch自身も当時、自分のTwitterでそうtweetした。で、『Room to Dream』の今日読んだ部分に、なぜそんなことになったのかの理由(というか顛末・当事者たちの勘違い)が書いてあった。つまりこうだ。


Lynchと一緒に『Twin Peaks: The Return』の制作することになったShowTime(の弁護士連中)は、この作品をTVの連続モノと捉えていた(なにしろ、ShowTimeは、ずっとそういうものを作ってきた会社だから)。その場合、予算というか支払いは、1エピソード毎になるのが、この会社の通例だった。つまり、エピソード数が増えるほど、会社側の支払いも増えるという仕組み。会社側がその腹づもりで、Lynchに対して、エピソードは全部で何話なるかを尋ねると、9話以上になるだろうという曖昧な答え。この答えを会社側は、できるだけ予算を分捕ろうとする戦略のように捉えたか、あるいは、単に、これでは総額いくらになるかわからないのでマトモなビジネスにならないと考えたのかもしれない。何れにせよ、会社は、エピソードの話数がはっきりしないならカネは出せないとLynchに伝えた。一方、Lynchはこの作品を、初めから[極めて長い一本の長編映画]と捉えていた。長い長い(あの『インランド・エンパイア』の何倍も長い)映画を、一時間ごとに切り分けて、毎週配信するつもりだったのだ。つまり、Lynch的には、最終的にエピソードが何話になろうと、映画一本を撮るための予算が貰えればよかったのだ。だから、エピソードが全部で何話になるかも、そもそも全体の予算が決まらければ分からないのだ。なぜなら、全体の予算に合わせて、自ずと映画の長さも決まるからだ。


結局、周囲の人間(出演予定の俳優たちなど)の働きかけもあって、両者はもう一度話し合い、誤解は解けた。すなわち、Lynchは、会社側が出せる予算を提示してくれたらその予算内で作れる長さの映画を一本撮る。その長さが決まったあとで、エピソードの話数も決まると説明し、会社側も、できるだけの予算を出すから、その予算内でなら、長さ(話数)は気にせず作品を撮ってほしいと答えた。斯くして『Twin Peaks: The Return』は無事に日の目を見たわけである。因みに、出来上がった『Twin Peaks: The Return』を全18話で割ると、エピソードあたりの予算(会社側の支払い)は割安になったらしい。