ラッセル・クロウ主演『ビューティフル・マインド』(吹替版)を観た。2周目。晩年にノーベル賞を受賞するところまで描かれている映画だったことなどすっかり忘れていた。つまり、暗号解読の仕事が実は全て幻覚だったということが明らかになって終わる映画だと記憶していたのだ。だから、バッド・エンドの映画だと思い込んでいたのだが、今日観て、精神分裂病を「克服」して、ついに栄冠(ノーベル賞)を掴む映画だったことを「知った」。前に一度観たのに、全然覚えてないので「ああそうだった」という感覚すら皆無なのには、自分でも笑った。
ところで劇中、ジョン・ナッシュが受けていた恐ろしげな治療すなわち「インシュリン・ショック療法」についてウイキペディアで調べてみた。曰く、
”インスリン・ショック療法とは、かつて行われていた統合失調症の治療法の一つ。オーストリア出身のアメリカ合衆国の医師マンフレート・ザーケルが、ショック療法として1933年に提唱した。患者に対し、空腹時にインスリンを皮下注射し、強制的低血糖によりショック状態と昏睡を起こし、1時間後にグルコースを頸静脈に注射し覚醒させる。医療事故の危険性もあり、抗精神病薬の開発が進み薬物治療が出来る様になったため、1950年代以降は廃れる。その後も中華人民共和国やソビエトなどで1970年代まで行われていた。”
ということらしい。恐ろしいね。
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ロバート・A・ハインライン著、矢野徹訳『月は無慈悲な夜の女王』kindle版、読了。岡田斗司夫曰く、富野さんが『ガンダム』の元ネタにした本の一冊(もう一冊は同じハインラインの『宇宙の戦士』)。たしかに内容は面白い。なるほど、『ガンダム』に通底する「価値観」と同じものが描かれている。が、翻訳が今のグーグルの機械翻訳レベルで凄まじい。日本語なのに意味が分からなかったりする。これは原書を読む必要がある。
で、思った。早川書房は、出版から50年ほど経ってもなぜ、こんなガラクタ翻訳の本を売り続けているのか? 可能性のある理由をいくつか考えてみた。
1)翻訳の酷さは理解しているが、なんらかの契約上の縛りで、新しい翻訳本を出せない。
2)実は、英語の原書も、このくらい「よくわからない英語」で書かれている。この場合、更に二つの理由が考えられる。
a)原作者のハイラインが、実は英語が母語ではなく、だから得意ではない(まさか!)。
b)語り手の「マン」が月世界人なので、意図的に、普通の英語とは違う英語で書かれている。
3)そもそも、この矢野徹翻訳に早川書房自身は何の問題も感じていない。
一番ありそうで、しかも一番致命的なのは(3)。