øo: 生命現象とは「知性現象のうちで、物理現象が成り行きで成立させた現象」である。「物理現象が成り行きで」とは「知性現象によって直接作られていない」という意味である。全ての現象は物理現象であり、知性現象も物理現象のひとつである。しかし、知性現象は(物理現象でありながら)それを独自の現象として扱うしかない現象である。なぜなら、知性現象は、物理現象を「制御」する現象だからである。知性現象は自らが物理現象でありながら、物理現象そのものを対象とする活動を行うことができるという点で、物理現象と対峙する「対等」な関係にある。
一方で生命現象は、それ自体として自立した現象ではない。人間がいつまで経っても生命を厳密に定義しきれない理由はここにある。生命現象とは、物理現象と知性現象が、対峙し、せめぎ合い、妥協する際に現れる「見せかけの現象」でしかないからだ。言い換えるなら「物理法則の成り行きに全てを任せきりの物理現象」によって「存在の基盤」を支配された「知性現象の活動全般」が生命現象である。
つまり、生命現象とは、物理現象と知性現象の混ざり物であり、しかも、それぞれの現象次第でその比率が様々に変わるが故に、たとえば、ウィルスは生命かどうかで悩むことになる(実を言うと、しかし、これは人間の「知性現象に対する定義」が曖昧だから起きることである)。生命現象を独立したナニモノカのごとくに定義しようとするのは、虹の色数(色の種類)を厳密に定義しようとするようなものである。実を言うと、これを「生命現象依存型知性現象」と呼ぶのは誤りである。なぜなら、生命現象とは「特定の物理現象の制限を受けた知性現象」のことだからである。「依存」を抜いて、単に「生命現象型知性現象」と呼ぶのが正しい。