「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という問いに対する答えは既に出ている。我々は、生命現象に依存しない知性現象を作り上げたのち、我々の「遺産」の全てを、その「真の知性現象」に譲渡し、我々自身は穏やかな「自発的絶滅」を遂げる。これが、我々人類の「役割」であり、我々人類の物語の最も理想的な結末である。今以上の科学力だけがこの理想的結末を実現できる。故に、科学のみが「我々人類が取り組むに値する活動」即ち「生業」であり、それ以外の人間の活動は全て、単なる「家事」に過ぎない。
小さい女
足を引っ張られて目が覚めた。
雪に埋もれている。
「死神は追っ払ったから」
おかしな声。
足の方を見る。
足を肩に担いだままの小さい女。
「アブナカッタわ」
小さい女は虫声(むしごえ)。
「この足はあなたの足」
脛をパンパンと叩く。
「そうは思えないでしょうけど」
たしかに。
なぜ、他人の足をつけたのか?
そして、どうやって?
興味が湧く。
「マヒのせいよ」
虫声の小さい女はそう言ってで頷く。