2020年9月3日木曜日

5-2

 

夜の散歩。

明るいコンビニの店内。

レジに店員はいない。

客がひとり。若い男。立っている。

缶珈琲を持って、煙草を指差す。

店員を探して頭を動かす。

苛立って騒いでいる。


実は休憩室に店員はいる。

オーナー店長である。

深夜のアルバイトは募集中。

店長は廃棄弁当で夜食を済ませたところ。

監視カメラのモニターに目をやる。

画面内の店は依然として無人である。

店長はタブレット端末に戻る。


若い男はついに諦める。

缶珈琲をレジに放置して出口に向かう。

ドアを開けたところでスッと消える。

それから冷蔵庫の前にフッと現れる。

扉を開け、缶珈琲を一本手に取る。

機嫌は良さそうだ。

少なくとも不機嫌ではない。

レジに向かう。

レジには誰もいない。

店員を探す。

聞こえない大声で煙草を指差す。


休憩室の店長はふと顔を上げる。

店内モニターの画面を見る。

無人。

しかし今度は腰をあげる。

休憩室のドアを開けレジを見る。

誰もいない。


店の外からは二人が見える。

休憩室から顔を出した店長。

レジ前で店員を探す若い男の客。

二人の目線の先にはお互いがいる。

それが店の外からだとわかる。

しかし店長は休憩室に戻る。

客は缶珈琲を放置して出口に向かう。


毎週月曜25時25分から25分間。

缶珈琲と煙草を決して買えない客。