「我々はどこから来て、どこへ行くのか」という問いに対する答えは既に出ている。我々は、生命現象に依存しない知性現象を作り上げたのち、我々の「遺産」の全てを、その「真の知性現象」に譲渡し、我々自身は穏やかな「自発的絶滅」を遂げる。これが、我々人類の「役割」であり、我々人類の物語の最も理想的な結末である。今以上の科学力だけがこの理想的結末を実現できる。故に、科学のみが「我々人類が取り組むに値する活動」即ち「生業」であり、それ以外の人間の活動は全て、単なる「家事」に過ぎない。
√ 分からないのは訛りのせいだ
島に上陸した。
船は帰った。
老人が網の手入れをしている。
百年も海を彷徨いたような顔の皮膚。
呼びかけて訊いてみた。
地元の老漁師は網の手入れの手を止めた。
島の奥の斜め上を指差す。
島の山の頂に白い建物。
歯を見せて頷く。
それから何かを教えてくれる。
しかし分からない。
分からないのは訛りのせいだ。
老漁師の瞳の黒は皆薄い。