死神というのは、相撲取りと同じで、うっかり人を殺してしまったりしたら、それはもう存在意義の根本を揺るがしかねないために、決して自分では自動車の運転をしない。近場は無論徒歩で済ますが、長距離の移動には公共交通機関を利用する。即ちバスや電車である。しかし、何と言っても便利なのは、タクシーだ(タクシーが果たして公共交通機関に含まれるかどうかはよくはわからないが)。死神Bもタクシーを愛用している。しかも、乗るのはいつも同じ、或る特定のタクシーである。電話一本で直ちにやってくるそのタクシーの最大の特徴は、運転手が百歳の爺様だということ。百歳のタクシードライバーが運転するタクシー。実に、死神が乗るにふさわしいタクシーと言えよう。