2020年9月1日火曜日

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若くして死んだ医師の幽霊が、毎晩夜中にベッドサイドに現れて、「研究協力」の依頼をしてくるのには閉口する。クリップボードのようなものに何やら書類を挟んで、ここにサインをしてくれと指差すのだ。「研究」の内容について訊くと、漠然と「治療法だ」と答える。何の治療法か訊くと、苦しい顔で考え込む。どんな病気の治療の研究かは思い出せないらしいが、とにかく彼にとっては重要な病気、どうしても治療しなければならない病気なのは間違いないらしく、その熱心さは、とても、もう死んでいるとは思えない。