2020年9月4日金曜日

ライフログ

 


人工人格の形成には膨大なライフログが必要。ライフログとは、ある個人の経験データと身体データをあわせたものだ。それが、ある閾値を超えていなければ〈人格〉の再生はできない。それはつまり、ライフログを残さないまま死んでしまった者の人格は再生不可能ということ。それはつまり、人工人格技術成立以前の、過去の偉人の人格再生は不可能だということ。人工人格技術では、歴史上の人物を自由に選び取って蘇らせることはできない。つまり、【グノシエンヌの3番】にもし、そういう歴史上の人物がいれば、彼(彼女)は前駆体を持たない人工人格ということになる。前駆体を持たない人工人格は人工幽霊ではない。そもそも幽霊とは〈生前〉を持つ存在を指すからだ。前駆体を持たない人工人格は「完全人工人格」と呼ばれるか、「なんちゃって人工幽霊」と呼ばれる。あるいは「人工幽零」と呼ばれる(見たまえ、最後の「霊」が「零」になっている点が違う)。


未来への一方通行のタイムマシンは原理的には全く可能だが、その場合とても重要なのは、タイムマシン発明以前の過去からは誰も未来にはやってこないということ。人工人格=人工幽霊もそれと全く同じ。人工人格によって、永遠の未来を手に入れられるのは人工人格技術確立以後に死ぬ人間だけだ。